☆アナゴ君日記☆







僕は魚市場の仲買の店(まあ市場と小売りの間の店ですわ)で働いている
市場で売ってる魚は各漁港から獲れた魚が箱に氷が入って来る場合と水槽に泳いで市場まで来る場合がある
だから仲買の店には市場から買った魚を泳がして売ってる店もある(うちの店も泳がしていろいろ売っている)
ただ泳がしている魚はいつでも新鮮だが海水が肌に合わないのか生け簀(共同の水槽)から出したり入れたりするのですぐ死んでしまうのだ・・・
「ご臨終です・・・・・チーン」
ということをふまえてのお話





今年の祇園祭の頃(7月中旬)
うちの店は泳いでる「アナゴ」を購入した(20匹ぐらい)
ただ京都では祇園祭の頃一番売れる魚は「ハモ」(しらない人はうなぎみたいな魚と思ってください)が売れるので
よく似たアナゴはいまいち売れない(うなぎは「土曜の丑」が近いので売れる)
だからアナゴなんてみんな見向きもしないので







1匹死に・・・「チーン」



また1匹死に・・・「チーン」



また一匹死に・・・「チーン」








とアナゴは結構生命力が強いのだが
さすがに何日もいたら
自分の生まれた海の環境ではないので
どんどん死んで逝くのだ







「チーン!チーン!チーン!チーン!・・・・・」







そして1ヶ月後





アナゴの数は・・・・・








残り1匹!








状態的には「ランボー」みたいか(古くてすんません・・・)





ここまで死んだ「アナゴ」もいたのだが
売れた「アナゴ」もいて最終的に1匹になった





さすがに1ヶ月もいるとその「アナゴ」は







ガリガリのガリクソン状態になっている







それをみた僕はさすがに1ヶ月もいるので
少し愛着がわいてきて
ちょっとエサでもやろかなと気分になった
と思って「アナゴ」をみていたら
うちの店の人がきて







「エサをやるか?」







の同感の一言
どうやら店の人全員がこの
荒れ狂う現代社会に勝ち残った「アナゴ」に
愛着がわいていたのだ





ほんでもってエサをあげる事に
エサといってもさばいた魚のアラを
探して何の魚かわからない肝の部分
それを口の前に持っていく
すると・・・・・








秒殺!いや瞬殺!








でそのエサを
「パックリ!」







と一口で完食!







僕らは







「おー!」







の大歓声





普通の「アナゴ」は口元に持っていっても
普通警戒して食べないのだが
よほどおなかがすいていたのだろう
警戒するそぶりも見せなかったのである





一口で食べたのでさらにもう一つエサを上げると
これもペロリ!
それをみてまたもやみなさん







「おー!!」







そしてその時みんなの中である一つの事が心に宿った








「アナゴ」=「ペット」








その時からみんな毎日えさをやるようになった
相変わらずおなかがすいてるのでバクって食らいついてくる
何日かやってたらおなかが空いてもいないのに普通に口元にやったらバクッと食らいつくようになる
どうやら知らぬ間に「アナゴ」の調教に成功したようだ
そうなってくると余計に愛着がわくようになり
最初エサは魚のアラだったのが
アジやらたこやらいろんな物を食べさせたくなる
その度おいしそうに食べている
僕らはさらに







愛着「ジーン・・・」







ということで





みんな犬や猫がじゃれてくる姿を見てのに愛おしくて愛着がわくように








僕らは「アナゴ」がクネクネ動く事に愛着がわくようになってしまったのだ








たかが「アナゴ」なのに・・・





さらにこの「アナゴ」ペットに知れ渡って
近くの店もこのペットを見に来たり
魚を買いに来るお客さんもペットとわかってるので
誰一人この「アナゴ」を買いたいという人もいなくなったのだ








「アナゴ」完全に店の一員に昇格!








そして月日が経ち
また「アナゴ」買った時
その「アナゴ」達と混ざってどれかわからなくなる
というえらい事件が起きたが
その時は





エサを近づけたら







1匹だけくらいつく「アナゴ」







がいたので
すぐ発見できる
いや〜調教のたまものやね






とまあこんな感じで店の人みんなこの「アナゴ」には長くと生きて欲しいと願うのであった





そして・・・・





さらに半年の年月が経ち





今・・・・・





あの「アナゴ」は・・・・・・・・





・・・・・・・








生きてます!







が!







昔と変わってしまった・・・・・







どう変わったのかと一言でいうと








「王様」








キング・オブ・アナゴです





詳しく言うと






まず昔のガリ子ちゃんではなく
今や








プクプク、太って動きものろいです








それにあんまり動きません







完全にデブです







さらにエサを与えたら昔あんなに食らいついた子なのに・・








今やエサを選びます








アラや安物の魚を口に持っていても








完全無視です!








タイやイカならすぐ食べるのですが
この「アナゴ」はすっかり贅沢主義になっています







・・・・・なんやこの「アナゴ」







まあ言ってみれば
ドラマで田舎から都会に出てきた純粋な少女が
都会の生活に慣れすっかり荒れてしまい
もう元の純粋さをなくしてしまった
あれですかね







「アナゴ」なのに・・・・







みんなまだ愛着はあるのですが
僕は時々思います








売られてしまえ・・・・








でもこの「アナゴ」まだまだ店にいそうです

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